【社会】八王子傷害事件 誤認逮捕・起訴、謝罪へ…警視庁と地検


 月内にも直接
 2014年に東京都八王子市で起きた傷害事件で男性2人が誤って逮捕、起訴された問題で、警視庁と東京地検が2人に月内にも直接謝罪することが、捜査関係者や2人の代理人弁護士への取材で分かった。
初動段階で客観的証拠の収集を怠ったうえ、変遷していた目撃証言に過度に依存した捜査の問題点が内部調査で明らかになったといい、男性側は詳しい経緯の説明も求める。【小林洋子】
 事件は14年1月に発生。今年3~4月、いずれも中国籍で会社経営者の47歳と39歳の男性が傷害容疑で逮捕、起訴された。その後、犯人が逃走に使ったタクシーのドライブレコーダーに、2人が使えない言語で会話する男3人の姿が記録されていたことを弁護士が確認。
東京地検立川支部は起訴を取り消した。
 警視庁と地検の調査などによると、警視庁八王子署は複数の男が関与したとみて捜査を開始。
事件の約2カ月後、写真を見せて犯人を選ばせる「写真面割り」に応じた目撃者は、24人の中から47歳男性を特定し、残りの男については「顔はあまり覚えていません」「身長約160センチ」としていた。
 この目撃者は、47歳男性が今年3月に逮捕された後に改めて面割りに応じ、「写真を見て当時の悲惨な状況を思い出し、顔も間違いなく思い出した」として、39歳男性を2人目と特定した。
 ところが、2人目の身長に関する証言は当初の「約160センチ」から「約170センチ」に変遷。最初に特定された47歳男性は事件当日コートを着ていたが、この点の証言も当初の「白っぽいTシャツ」から「白っぽい上着」へと変わっていた。
 こうした証言の変遷や客観的な事実との矛盾が軽視された点について、2人の代理人の牛田喬允(たかまさ)弁護士は「目撃者の証言が、時間がたつにつれて2人の特徴に寄ってきた印象がある。
2人を犯人と特定できる客観証拠はなく、さらに捜査をすべきだった」と警視庁と地検を批判。法務・検察幹部は「面割りしか証拠がない中で、目撃者らの証言に変遷がないか、そこに矛盾点がないか確認すべきだった」と指摘している。
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 八王子市の傷害事件
 2014年1月22日未明、東京都八王子市内の繁華街の路上で複数人の男が男性2人とトラブルになり、暴行を加えて2週間~1カ月のけがをさせ、タクシーで逃走した。
今年3~4月、いずれも中国国籍の男性2人が傷害容疑で逮捕、起訴された。2人は一貫して無実を主張し、弁護側は公判に2人が使えない言語で会話する3人組の男が映ったタクシー内のドライブレコーダーを提出。
東京地検立川支部が7月、「捜査が不十分だった」として起訴を取り消し、東京地裁立川支部が裁判手続きを打ち切る公訴棄却を決定した。

ソース:毎日新聞
2016年11月20日 09時00分(最終更新 11月20日 09時00分)
http://mainichi.jp/articles/20161120/k00/00m/040/085000c