【軍事】中国戦闘機、注目は20より10? 初披露J-20の陰に隠れた最新主力機J-10Bの「実力」[11/19]


中国広東省南部の珠海市で2016年11月に開かれた「エアショーチャイナ」。初披露されたステルス戦闘機J-20が話題を独占した感がありますが、その陰にかくれてしまった最新鋭主力戦闘機J-10Bこそ、実は中国機の今後を占う重要な機といえるかもしれません。

J-20初披露の陰で

 2016年11月6日(日)から11日(金)にかけ、中国の経済特区である珠海において、中国国際航空航天博覧会「エアショーチャイナ」が開催されました。今年で第11回目となる「エアショーチャイナ」は、東アジアにおいて最も大規模な航空・防衛見本市のひとつであり、主に中国製の武器・航空機メーカーを中心に多数の出展者を集めました。

 なかでも中国国産のステルス戦闘機である、成都飛機J-20が飛行展示を行い、初披露されたということもあって、日本でも多くのメディアにおいて報道されました。

 J-20は、中国における戦闘機開発技術の最先端にある機種ですが、まだ実用レベルにはないとみられます。一部では来年にも配備という観測もありますが、J-20は初飛行からわずか5年しか経過していません。

 たとえば、アメリカのF-35は2006(平成18)年の初飛行から実戦配備まで9年を要しました。またロシアのT-50は2010(平成22)年に初飛行し、本来ならばすでに実戦配備されている予定でしたが、開発の難航でスケジュールは遅延しています。アメリカやロシアといった世界のトップ2ですらこの状況なのですから、それよりもはるかに後方をゆく中国のJ-20が、仮に実戦配備されたとしても、本当に実用レベルの能力を備えるようになるのはまだ当分、先になるでしょう。

http://trafficnews.jp/assets/2016/11/161119_j10b_01-600x400.jpg
中国空軍の新鋭戦闘機J-10B。先進的なセンサーを持ち、さらに航空自衛隊F-2とは比較にならないほど多彩な対地攻撃兵装が特徴的(関 賢太郎撮影)。

 一方、J-20の陰に隠れてしまいほとんど話題にならなかったものの、「エアショーチャイナ」においてはもうひとつの中国製戦闘機、成都飛機J-10Bも公開されていました。J-10Bは現在、中国空軍に実戦配備済みの最新鋭主力戦闘機であり、実用化のめどが立たないJ-20よりもはるかに高い能力を持っていると推測されます。

J-10Bは本当に三菱F-2を上回るのか

 J-10Bは既存のJ-10Aを原型に再設計されており、J-10Aから大きく性能向上を実現していることはほぼ確実です。J-10AとJ-10Bの、見た目上の最も大きな違いは「DSI」と呼ばれる、ステルス性の考慮された空気取り入れ口にありますが、両機の本質的な違いは機体の「中身」にあります。

 「J-10Bは日本の三菱F-2を上回る」

 ある成都飛機の重役はこのように述べ、J-10Bに対する強い自信を露わにしています。

http://trafficnews.jp/assets/2016/11/161119_j10b_02-600x400.jpg
J-10Bは単発エンジンの近代的なカナード付き無尾翼デルタ機であり、かなりコンパクトにまとめられている(関 賢太郎撮影)。

 J-10Bは中国国産戦闘機として初めて、新世代の戦闘機用レーダーである「AESAレーダー」を実用化しました。AESAレーダーはF-2にも搭載されているので、この点はほぼ同等といえますが、J-10Bにはさらに、F-2には無い「赤外線捜索追尾装置(IRST)」(赤外線を放つ対象を探知、追跡する機能を備えたシステム)を搭載しており、また空中早期警戒機と情報共有を行うデータリンクシステムを備えていると推測され、情報収集のための手段をF-2よりも多く持っています。戦闘機同士の空中戦は「先手必勝」であり、情報収集手段、特にネットワーク能力の差は決定的な要因にもなり得ます。

 とはいえ、実際にJ-10BがF-2を上回っているかどうかは疑問です。いくら新機種のスマートフォンが高性能であっても、インストールされているアプリが古ければその性能を十分に活かせないのと同じように、現代の戦闘機はミッションシステムのソフトウェアが勝負だからです。

http://trafficnews.jp/post/60238/

(>>2以降に続く)