【東京五輪】スポーツ選手、東京五輪会場問題でもっとモノ申せ “東洋の魔女”涙で嘆願書の意味


 2020年東京五輪でバレーボールの会場として新設予定だった有明アリーナ(東京都江東区)を取りやめ、横浜アリーナで開催される案が検討されている。1964年東京大会で金メダルを獲得したバレーボール全日本女子のメンバーだった千葉(旧姓・松村)勝美さん(72)らが11月8日、計画通り有明アリーナ建設を訴えて嘆願書にサインした。

 参加したのは男子代表監督に就任する中垣内祐一らオリンピアン16人。前回の東京大会や68年メキシコ大会、72年ミュンヘン大会、76年モントリオール大会などに出場したシニア世代が目立ったが、若い世代は少なかった。2012年ロンドン大会で活躍した井上香織さんが目を引いたが、井上さんもすでに引退した選手。今年のリオデジャネイロ五輪に出場した選手や、バリバリ現役の選手はいなかった。

 Vリーグが始まり、現役選手は練習に明け暮れているのかもしれない。この16人になった経緯はよく分からない。ただ、バレー界にとっては、有明アリーナが新設されるか否かは一大事である。少しぐらいは時間を割いて「バレー界にもレガシーを残して」と訴えられなかったのだろうか?と疑問に思ったものである。

 バレー会場をめぐっては、招致段階での費用は176億円だったのに、いつの間にか404億円にまで高騰。そのため、都の調査チームは有明アリーナの規模を縮小するか、横浜アリーナへの変更案を提案している。

 この問題に関連して、Jリーグの初代チェアマンで日本サッカー協会最高顧問の川淵三郎氏が以前、テレビのワイドショーを“はしご”して「有明アリーナでバレーをやらせてほしい」と訴えていた。記憶している人も少なくないのではないか。

 川淵氏がバレーボール会場について訴えていたのは、バレーやサッカー、ラグビー、バスケットボールなど球技のリーグが加盟している一般社団法人「日本トップリーグ連携機構」の代表理事であり、会長だからだ。

 古河電工ではサッカー選手としてだけでなく、関連会社の取締役として経営に携わったこともある。Jリーグを成功させたのは周知の通りで、バスケットボールでも長らく分裂状態にあったリーグを一本化させ、Bリーグを発足させた。ワイドショーでも、五輪後の“後利用”についても説明していた。

 ただ、スポーツ界はいつまでも、「何か困ったことがあったら、川淵さん頼みます」という姿勢でいいのであろうか? 他にスポーツ界には若い人材はいないのだろうか。

 バレー会場の有明アリーナだけではない。水泳やカヌーもそうだ。水泳会場は新設予定だったオリンピック・アクアティックセンターから既存の東京辰巳国際水泳場を改修する案が出ていた。ボート・カヌー会場は海の森水上競技場にするか、長沼ボート場(宮城県登米市)へ変更するか検討されている。それでも、アスリートの声があまり聞こえてこない。

 ボートで1996年アトランタ大会から2012年ロンドン大会まで5大会連続で五輪出場を果たした武田大作氏がワイドショーなどに出演し、「海の森水上競技場は会場に適さない」などと訴えたのが目についたぐらいだ。

 他の競技のオリンピアンもなぜ、声を上げないのだろう? リオ五輪では、同じ日本選手団として戦った仲間ではないか。対岸の火事でいいのか。決して、沈黙は金ではない。手遅れにならないためにも、今、声を上げるべきだろう。


産経新聞 11/19(土) 18:30配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161119-00000525-san-spo
http://amd.c.yimg.jp/amd/20161119-00000525-san-000-1-view.jpg