【映画】『復活ロマンポルノ』 気鋭の5監督が新作 見どころは作家性


 制作開始45周年を記念した「日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」の新作5作品が11月26日から来年2月にかけて、東京・新宿武蔵野館などで順次公開される。映画界の日陰の花として芽を出したロマンポルノの新作に、園子温監督ら現代の気鋭5人が挑んだ。その見どころを紹介する。【毎日新聞学芸部・勝田友巳】

 ◇元のロマンポルノは低予算750万円で撮影10日間

 1971年、映画大手5社の一つだった日活は、傾いた社業を立て直すべく、成人映画路線にかじを切った。60年代後半には映画界は斜陽化していたが、独立プロの低予算ピンク映画が製作本数の40%を占め、観客を集めていた。日活は撮影所の設備と人材を使い、「芸術的なポルノ作品」で売り出そうとしたのだ。

 製作費750万円、撮影日数は10日前後、音楽は既成曲、少人数のスタッフ編成、移動はマイクロバス1台--など、製作面ではギリギリまで切り詰めた。それでも独立プロと比べれば予算は倍、オールカラーとぜいたくだった。

 内容も、10分に1回のラブシーンがあればあとは自由。路線転換を受け入れない多くの監督、スタッフが日活を離れた一方、つかえていた重しが取れて、若手が一線に躍り出た。88年にビデオに押されて幕を閉じるまで、日活ロマンポルノは百花繚乱(りょうらん)咲き乱れる。

 テーマはさまざま。性表現の可能性の追求、男女の性愛と情念、社会風刺。ジャンルも多様で、コメディーもスリラーも、シリアスドラマも文芸作もあった。神代辰巳、藤田敏八、長谷部安春、小沼勝、曽根中生らが次々と秀作を発表。人間の本能である性を見つめた作品は作家性を強く持ち、今も衰えぬ人気を保っている。

 ◇ロマンポルノ・リブート・プロジェクト始動

 時は巡り、直接的で過激、身もふたもない性表現がネットで無料で見られるようになった。そこで扇情だけでないロマンポルノが再評価される。「リブート・プロジェクト」と名付けられた企画は、元祖の第1作から45周年を記念して、日活が新作を連続公開するものだ。

 当時と同じ条件を付けて、気鋭の監督に映画を委ねようという試みである。条件は、ロマンポルノ初挑戦▽製作費は一律▽撮影期間1週間▽原作なしのオリジナル▽10分に1回のベッドシーン。今回はエロで集客という商売心より、作家性を発揮してもらうことが主眼だ。

 今回の5人はいずれも脂がのったベテラン、それぞれの持ち味を出して腕を競い合った。監督とタイトル、公開日は次の通りだ。

 行定勲「ジムノペディに乱れる」(11月26日)▽塩田明彦「風に濡れた女」(12月17日)▽白石和彌「牝猫たち」(2017年1月14日)▽園子温「ANTIPORNO(アンチポルノ)」(同1月28日)▽中田秀夫「ホワイトリリー」(同2月11日)。

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毎日新聞 11/20(日) 9:00配信
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