【サッカー】<選手権出場校>大阪・東海大仰星|「やり続ける!」強い意志が生み出す破壊力と粘り強さ


 5度目の選手権行きがかかった大一番は、前年王者の阪南大高が相手。「個人能力で見れば阪南大高と対抗するのは難しい」と中務雅之監督が話せば、主将のMF松井修二(3年)が「阪南大高の方が個人の力が高い」と口にしたのも無理はない。だが、東海大仰星にも勝算とストロングポイントは確かにあった。それは指揮官が試合のポイントとして挙げた怯まない姿勢と、「お互いの心を理解しながら、やり続ける姿勢」(松井)だ。

 松井が挙げた“やり続ける姿勢”は試合開始から攻撃面で見受けられた。今予選では、大会直前にMF谷野龍馬(3年)が負傷したため、これまでFWを務めていたMF見野龍太郎(3年)が左MFに入った。「最前線で見せる見野のハードワークを起点に、2列目が攻撃を仕掛けるのが僕たちの理想。攻撃の形は選手権予選を振り返っても良い形はなかった」と松井が振り返ったように、この日はベンチに回ったキーマン不在の影響は大きく、序盤からパスワークで相手を翻弄して崩すような場面はわずか。それでも奪ったら素早く前方にボールを蹴り出し、何度もサイド突破にチャレンジ。左右からのクロスと左SBの面矢行斗(3年)と右SBの大東史明(3年)が繰り出すロングスローで阪南大を押し込んだ。

 策が実り、13分には松井のクロスを見野が頭で合わせて均衡を崩すと、以降もサイドからの崩しで2ゴール。ただ、幸先良く3点を積み重ねたことによって、「浮足立ってしまった」(中務監督)仰星は、気の緩んだ隙に今度はサイドを崩され、35分と38分にFW木戸口蒼大(3年)にゴールを決められ、1点差まで詰め寄られてしまった。

 普通のチームなら、ここで下を向いてしまったかもしれない。ただ、仰星には「絶対に(阪南大高に)2連覇させないという気持ちで戦っていた」(松井)という強い意志があった。CBの吉田純平(3年)が「2点目を獲られたけど、まったく焦ってなかった」と振り返ったように勢いを増す阪南大高に怯まず、前を向き続けた仰星の選手たちは、ハーフタイムには「絶対に守り切ってやろう。1点差があれば、勝てるんや」と選手同士が声を掛け合い、後半に挑んだ。

1点を守り切るという残り40分間のミッションは決して容易いことではない。逆転を狙った阪南大高は司令塔のMF藤本悠太郎(3年)を起点に試合を支配。加えて、交代のカードを次々に切り、フレッシュな攻撃陣が果敢に仰星ゴールに迫った。

 それでも、「いつ失点してもおかしくなってなかったけど最後の粘りは今年、突き詰めてきた部分。最後まで気持ちをひとつにして戦えた」と松井が胸を張ったように要所をしっかり押さえて、同点弾を与えず。中務監督も「全員でやれているので、このまま行った方が良いのかなという雰囲気があった」と交代を我慢し、ミッションを続ける11人を見守った。

 決して、華麗なチームとは言えないかもしれないが、決めたことを1試合続ける姿勢が勝因のひとつだったと言える。全国でも楽ではない戦いが待つはずだ。それでも、「一人ひとりが全国で優勝してやろうという気持ち」(松井)を続けることで勝利を引き寄せるつもりだ。

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