【サッカー】なぜ酒井高徳は主将に指名されたのか?現地メディアに衝撃を与えた人物像とは


酒井高徳がハンブルガーSVの新キャプテンに任命された。ブンデスリーガでチームキャプテンを務める初の日本人選手の誕生だ。

近年は低迷しているとはいえ、ハンブルクと言えばドイツでも指折りの名門。3度のブンデスリーガ優勝経験を誇り、53年前の創設から1部に所属し続けている唯一のクラブである。今季、最下位に沈んでいるハンブルクにとって1部残留は至上命題であり、酒井にはそんなクラブの1部在籍の歴史を繋ぐというとてつもなく重い指名が課せられたことになる。

開幕から10試合勝利がなく、すでに自動残留圏内から6ポイント離されていたハンブルクが主将の交代を行ったのは妥当な判断だと言えるが、指名されたのが酒井であったことは驚きだった。確かに酒井は今季のハンブルクで公式戦全試合に出場しているただ一人のフィールドプレーヤーだが、チームの先頭に立って引っ張るような選手ではない。

近年のハンブルクはファン・デル・ファールト、そして昨季からはヨハン・ジュルーがキャプテンを務めてきた。どちらも”闘将”というタイプではないが、世界的な名門クラブでプレーしてきた選手で、チームでは大きな存在感を放っていた。

ただ、チームにはネームバリューのある選手は揃っているが、まとまりがないため結果が出なかった。近年は下位に低迷しているが選手の給与水準はいまだリーグ中位クラスにあるためか独りよがりなプレーも目立ち、チームからは一丸となって戦おうという気概が感じられなかった。

マルクス・ギスドル監督が変えたかったのはそこだ。ギスドル監督は謙虚に、貪欲に、チームで戦うことを選手に求めた。そのためのチームキャプテンは酒井でなければならなかった。それはクラブ公式メディアで発表されたギスドル監督の2つのコメントから読み取ることができる。

「我々は新しいカルチャーをチームに持ち込みたかったし、そうしなければならなかったんだ」

「ゴートクは今の我々に必要なことをすべて体現している。彼は疲れを知ることなく働き、ピッチの上で倒れるまでチームのために尽くす。オープンで、誠実で、コミュニケーションもよく取る。100%のプロ意識を持っている。他の選手の手本であり、キャプテンにふさわしい」

酒井は誠実な人柄で知られている。メディアからの取材に対しても誠実で、どんなに長くなろうと嫌な顔ひとつせず、記者からの質問に対して1つ1つ丁寧に答えていく。シュトゥットガルト時代には1人で30分近く話すことも珍しくなかった。

2015年の夏に酒井がハンブルクにやってくると、クラブ公式メディアが公開した、過去の対戦でラフプレーをしてしまったルイス・ホルトビーに謝るビデオの影響でその人柄に興味を持ったのか、地元メディアも酒井を頻繁に取り上げた。

当時、「まだドイツ語は全然できないですよ。インタビューのところはギリギリで話していて、向こうが解釈してくれたところを上手く記事にしてくれているって感じなので、しっかりしゃべれるようにならないとなって思いますね」と語っていたが、現地メディアの取材に対しても誠実に応えた。そして、昨季3月に現地メディアを驚かせる出来事が起きた。