【北方領土】日ロ両政府 北方領土を共同開発検討 漁業、環境保全想定[11/17]


日本、領土交渉進展狙うが、実効支配後押しの懸念も

 日本とロシアの北方領土交渉を巡り、日ロ両政府が北方四島の漁業振興や環境保全など幅広い分野での共同開発を検討していることが分かった。日本側は四島を日ロ協力の象徴的な地域と位置付けることでロシア側の譲歩を促し、領土交渉の進展につなげたい考え。元島民から要望が多い四島を訪問するための枠組みの拡大も合わせて検討し、12月のプーチン大統領来日時の合意を目指す方針だ。ロシア側は共同開発には前向きだが、四島の帰属や主権を巡る課題は多いほか、ロシアの実効支配を後押しすることになる懸念もある。

【動画】国後で「国民統一の日」祝う<北方四島映像だより>
http://dd.hokkaido-np.co.jp/cont/video/?c=special&v=907567809002

 日ロ両国の複数の関係者が明らかにした。両国政府は具体的な事例を想定した事務レベルでの協議に着手しており、安倍晋三首相とプーチン大統領が19日にも南米ペルーで行う日ロ首脳会談でも議論する可能性がある。首相は北方領土返還に関するプーチン氏の出方を見極めつつ、共同開発の実施に踏み切るかどうかを判断するとみられる。

 日本政府はこれまで、ロシアの施政権の下での北方四島の共同開発には慎重姿勢を示してきた。ただ、首相周辺は「今までと同じやり方では領土交渉は進まない。北方領土の主権の問題や国境線をどこに引くかはまず横に置いて、日ロ両国で四島を発展させていくことが必要だ」と指摘する。

択捉島・紗那の道路工事現場。ロシアによるインフラ整備が進む
サケマス養殖や自然保護分野を想定
 共同開発の具体例では、北方四島周辺海域で主権問題を棚上げして日本漁船の操業を認める 安全操業 の枠組みを参考に、四島でのサケ・マス養殖事業や、ロシア側が近年力を入れている自然保護分野での協力案が取り沙汰されている。日本側はロシア法の適用を受けない特別な枠組みを設け、両国の主権を害さない形で実施したい考えだ。

 一方、ロシア側でも、10月末から今月上旬にかけて来日したマトビエンコ上院議長が四島の共同開発に関し、ロシアの主権下で行うことが前提との認識を示しつつ、「日ロが互いに受け入れられる形で共同経済活動を行う用意が整うことを期待する」と述べ、日本側に配慮した枠組みを検討する考えを示唆していた。

 北方四島への訪問については、元島民らが旅券や査証(ビザ)なしで入域している「 ビザなし交流 」の拡充を軸に検討する方向だ。

  北方領土問題 を巡り、ロシア政府は平和条約締結後に歯舞群島と 色丹島 を日本へ引き渡すことを明記した1956年の 日ソ共同宣言 を重視する姿勢を示しつつ、国後、択捉両島は交渉の対象外との立場を崩していない。日本政府は同宣言の履行を求めつつ、四島の共同開発を国後、択捉両島についても協議する足がかりにしたい考えだ。

北海道新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161117-00010001-doshin-hok