【地球科学】マントルと地球中心核の熱対流運動が相互作用し合う様子を再現 地球がゆっくりと冷えるメカニズムを解明/JAMSTEC 


マントルと地球中心核の熱対流運動が相互作用し合う様子を
「マントル・コア統合数値シミュレーションモデル」により再現
―地球がゆっくりと冷えるメカニズムを解明―

1.概要

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦、以下「JAMSTEC」という。)地球深部ダイナミクス研究分野の吉田晶樹主任研究員らは、実際の地球のマントルと外核を想定し、球殻の外側の層と内側の層の間で粘性率が何桁も大きく異なる二層熱対流システムの高解像度二次元数値シミュレーションを実施することで、激しい熱対流運動が起こっているマントルとコア(地球中心核)の相互作用のダイナミクスに関する基本物理を世界で初めて解明しました。

私たちが住む地球の約46億年の内部変動はマントルと外核の対流運動の相互作用によって担われ、地球内部の最も外側を覆う粘性率が極めて大きなマントルの対流運動が主体的に外核の対流運動を支配していると一般的に考えられてきました。
しかしこれまで、この考えを定量的に実証した研究はなく、その物理メカニズムもよく分かっていませんでした。

本研究のシミュレーションによって、マントルと外核の熱対流運動が相互作用し合う様子を再現することに成功しました。
これにより、粘性率が桁で大きく異なる実際の地球のマントルと外核の境界(コア・マントル境界)において、熱的な交換が主として行われる「熱カップリング」という効果と、高粘性のマントルの対流がコア・マントル境界直下の外核最上部の流れを遅くする効果が働いていることがわかりました。
この両方の効果がある場合、外核の対流が非常に活発であるにも関わらず、コア・マントル境界での外核からマントルへの熱流量が抑制され、マントル対流のパターンが時間的、空間的に安定に保たれることになります。
また、地球誕生時から地球深部に蓄えられている熱が、地球の歴史を通じて“適度な効率”で宇宙空間に排出され、地球をゆっくりと冷やしている要因になると考えられます。

今後、地球誕生以降、冷却の一途にあるマントルの熱対流運動がプレート運動や大陸移動の歴史に及ぼす影響など、地球内部物理学上の第一級の未解決問題の解決に貢献することが期待されます。

なお、本研究は、JSPS科研費JP26610144(挑戦的萌芽研究)の助成を受けて実施されたものです。本成果は、米国物理学協会発行の「Physics of Fluids」2016年11月号に掲載されました。

タイトル: Numerical studies on the dynamics of two-layer Rayleigh-Benard convection with an infinite Prandtl number and large viscosity contrasts
著者:吉田晶樹、浜野洋三
所属:JAMSTEC 地球深部ダイナミクス研究分野
(引用ここまで 以下引用元参照)

▽引用元:海洋研究開発機構 プレスリリース 2016年 11月 16日
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20161116/