【経済】タチウオ、韓国で高級魚になっていた 乱獲で「枯渇」の現実味[11/20]


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国内のタチウオ漁獲量の減少が深刻だ。1967年のピーク時には約6万8000トンを記録していた国内の漁獲量が、最新2015年では7100トンにまで落ち込んだ。消費量の多い韓国への好調な輸出を背景に、国内外の漁業者による乱獲が止まらないことが原因とされる。

韓国でタチウオは「カルチ」と呼ばれ、煮付けや焼き物など様々な調理法で食べられる人気の魚だ。実際、日本一のタチウオ漁獲量を誇る和歌山県有田市でも、「水揚げしたタチウオの8割近くは韓国に輸出しているのが現状」(市水産係)という。

「韓国の方が高い値段で買い取ってくれる」

そもそも、タチウオの漁獲量が大きく減少したのは、国内漁業者の東シナ海での操業が衰退したのが大きな理由だ。水産資源状況の悪化や海外漁船の操業数増を受け、競合を嫌った国内の漁業者が相次いで東シナ海でのタチウオ漁から撤退したのだ。

だが、国内の主な漁場である瀬戸内海の数字だけをみても、タチウオの水揚げ量は減少し続けている。農林水産省が公表している「漁業生産統計」によると、瀬戸内海での2015年度のタチウオ漁獲量は約3900トン。05年度には約9200トンを記録していたが、10年間で半分以下に大きく落ち込んだ。

瀬戸内海でのタチウオ資源が減少している理由について、大分県水産研究指導センター水産研究部の担当者は2016年11月15日の取材に対し、

「韓国への輸出が好調で取引単価が高いため、漁獲高が減少していることが分かっていても漁を止めない業者が多いと考えられます」
と話す。そのほか、環境的な要因からタチウオ稚魚の生存率も「低下している」として、「資源の再生産もできない状況になっている」とも指摘していた。

実際、タチウオの漁獲量日本一を誇る有田市産業振興課水産係の担当者は取材に、「漁獲量は目に見えて減ってきている」と話す。その上で、韓国への輸出は「だいぶ前から続けていた」として、

「韓国の方が高い値段で買い取ってくれるため、水揚げしたタチウオの8割近くは韓国に輸出しているのが現状です」
と話す。そのため、国内では「漁獲量減少の影響があまり出ていないのではないか」と推測していた。
「韓国漁船の操業も適切に管理することが重要」

実際のところ、韓国でのタチウオ人気はどれほどなのか。韓国出身で都内のIT企業につとめる30代男性に聞くと、

「一昔前は価格が安く、カルチは日本でいうサバのような『大衆魚』でした」
と話す。この男性も、家庭ではタチウオの煮付けや塩焼きなどの料理を食べた記憶があるという。

だが、この男性によれば、ここ最近になって値段が高騰しているとして、「高級魚に近いイメージに変わりました」とも話していた。先述の有田市水産係の担当者も、タチウオについて「韓国では高級魚の扱いを受けているようです」と話していた。

こうした韓国でのタチウオ人気が日本に与える影響は、輸出の問題だけではないようだ。

農林水産省の漁場資源課が10月28日に公表した「資源評価報告書」(ダイジェスト版)によれば、日本の排他的経済水域(EEZ)内での韓国のタチウオ漁獲量は「日本の漁獲量と同程度」だという。その上で、「韓国漁船の操業も適切に管理することが重要」としている。

報告書を取りまとめた西海区水産研究所資源海洋部によれば、タチウオの生息域は日本海から東シナ海にわたるため、中国や韓国漁船の「乱獲」が国内資源に与えている影響も大きいという。そのため、

「タチウオの資源回復のためには、周辺諸国との協力が必須でしょう」
とも話していた。